アーモンド ソン・ウォンピョン著
アーモンド(扁桃体)が人より小さく、怒りや恐怖を感じることが出来ないユンジェと物心つかないうちに親とはぐれた不良少年ゴニの成長物語。
ユンジェは頭の中にある扁桃体が生まれつき小さく、感情がない。
周りの人達がどうして笑ったり、泣いたりするのかわからない。
喜びも悲しみも、愛も恐怖も、ほとんど感じられないのだ。
失感情症の人は自分の感情をうまく表現できないそうだが、ユンジェは感じることも苦手。
感情をあまり感じることができず、人の感情も読めないため人間関係が築きにくい。
そこでお母さんは色紙に短い文章を書いて貼り付けていった。
車が向かってくる→できるだけ離れる、近づいたら逃げる。
人が近づく→ぶつからないように片側に寄る。
相手が笑う→自分も微笑む。
表情については、どんなときも、相手と同じ表情をする。
といったような事例を次から次に書いて張り出していった。
「喜怒哀楽愛悪欲」の基本概念をしっかり暗記することだと。
「正直に言いすぎると相手を傷つける」という徳目を叩きこんだ。
お母さんとおばあちゃんの愛に包まれ大きくなっていくユンジェだが、ある日不幸な出来事が起き、おばあちゃんは亡くなり、お母さんは寝たきりになってしまう。
それから人との出会いにより成長していくユンジェです。
本の中で気になった文章書き出しておきます。
自分の人生を切り売りするような、そんなことをする自信はない。それは作家の才能がないということだ。
親しくなるって具体的にどうい事?
君と私が向かいあってしゃっべってるみたいなこと。一緒に何か食べたり、考えを共有すること。金のやりとりなしにお互いのために時間を使うこと。
遠ければ遠いで出来ることはないと言って背を向け、近ければ近いで恐怖と不安があまりにも大きいと言って誰も立ち上がらなかった。ほとんどの人が感じても行動せず、共感すると言いながら簡単に忘れた。
人生はいろんな味を味わわせてくれながら、ただ流れていく。
僕はぶつかってみることにした。人生が僕に向かってくる分だけ。
本屋は何千、何万という作家たちが、生きている人も死んだ人も一緒になって押し合いへし合いしている、人口密度の高い所だ。でも本は静かだ。手に取って開くまでは、死んでるみたいに黙りこくっている。そして開いた瞬間から話し始めるのだ。ゆっくりと、ちょうど僕が望む分だけ。
そうだね。